愛だろ、愛

山梨県玉諸神社


2008年のNHKの大河ドラマ篤姫」はなかなかの評判らしいが、来年の2009年は直江兼続が主人公の天地人が放送される。
私は歴史、特に戦国時代が好きなのであるが、好きな割には歴史ドラマはほとんど見ない。
おそらく「天地人」も何回かは見るだろうが、あまり興味をもって観ないと思う。
しかし、この時代に直江兼続大河ドラマで取り上げられるのは意味のあることかもしれない



直江兼続について少々説明すると、彼の幼名は樋口与六といい天正年間に越後上杉氏の重臣であった直江家に養子に入り、以降直江兼続として上杉景勝上杉謙信の養子)の側近として活躍する。
彼の才能には豊臣秀吉も惚れ込み、高禄でのひき抜きを画策したが、義に厚い兼続は丁重に断ったと言われている。



さて、この直江兼続ですが、「愛」と書かれた前立てのついた兜をかぶっていました。
その前立てについての由来は愛染明王(仏教の神様)から来ているとか愛宕信仰(火の神様)からきているとか言われているが、はっきりとは分かっていない。
しかし、兼続がどういう意図でその前立てを使ったにせよ戦う相手、もしくは味方の兵士に「愛」を見せて戦ったことは非常に興味深い。



また、兼続が宰相をつとめた杉氏も欲望渦巻く戦国の世にあって、謙信以来の「義」を通したことで異彩を放っている



今の時代を見てみると、「義」が軽んじられ「愛」が決定的に不足している世の中です。
企業や役所も「義」を忘れ「利」に走り、「利」が「利己主義」を生み他人を切り離し、他人を平気で傷つけ、家族の間でも「愛」が足りず、親が子を、子が親を殺める世の中になってきています。
そして、その人間の想念が今や環境破壊を増長させる結果となっていると感じます。



でも天地人には、今必要なものが揃っているんですよ!



上杉氏は結局「義」を通して関が原の天下分け目の戦いで石田三成率いる(細かいこというと実際の総大将は毛利輝元なんですが)西軍に付き、西軍についた多くの大名が領地を取り上げられ没落しますが、上杉氏は「直江状」と呼ばれる家康への宣戦布告ともとられる無礼な手紙を送りつけておきながら、領地は大幅に削られるものの米沢30万石の大名として存続します。
上杉景勝直江兼続主従は自らの生き方を迷うことなく貫き通し、それが最終的には徳川家康に上杉の領地を取り上げることを躊躇わせたのだと思います。



さて、側室も持たず家臣領民にも善政を敷いた、そんな愛の直江兼続でも残酷なエピソードも残っています。
あるとき、兼続の家臣が下人を無礼討ちをして、その遺族たちが兼続に「何も無礼討ちにされるほどのものではなかった」と訴えたので調べてみると遺族の訴えの通りだったので、兼続は家臣に慰謝料を支払うように命じた。しかし遺族たちは下人を返せと譲らないので兼続は「死人は生き返らないのだから、慰謝料で納得してくれないか」と言ったが、遺族たちはあくまでも下人を返せと言い張るので兼続は「よし下人を返そう。だが、あの世に遣いにやれる使者がいないので、すまぬがそのお前たちがが行ってくれないか?」と言って遺族の首をはね、その首を河原に晒して、そこに、「この者どもを使いに出すから死人を返せ 慶長二年二月七日 直江山城守兼続判」と閻魔大王への嘆願書を書いた札を立てたそうだ。



戦国時代の愛って厳しいんですね・・